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あまりに降るので

 雨が降り続いて、家の中にいても雨の音が聞こえています。そのせいか意識が雨に持って行かれがちなので、雨の絵本を思い出してみました。

 まず思い浮かんだのが1972年出版の『あめのひ』ユリ・シュルヴィッツ/作 福音館書店 です。ユリ・シュルヴィッツの絵本というと『よあけ』を思い浮かべる人も多いと思いますが『あめのひ』も私は好きです。雨を見ている子どもの視点で泥遊びといった身近な雨の風景から雨が集まって水たまりになり川になりと雨の行き先が柔らかい色調で明るく描かれます。壮大な自然を描いていながら重くならずに軽やかで好ましい印象です。翻訳は文語的で少し硬い感じがしますがそれでも心に残る絵本です。

 次に思い浮かんだのが2010年出版の『ぴっつんつん』武鹿 悦子/作 もろ かおり/絵 くもん出版 です。これは画家のもろ かおりさんの絵がまずあって、そこに武鹿 悦子さんが文章をつけたという作品です。柔らかいカラフルな絵で忍者のようにも見えるフードをかぶり傘をさした子どもが生き生きと描かれています。画面構成がデザインのようで見ていて楽しい作品ですが、それを生かした「ぴっつんつん」という言葉が生きています。音も楽しいので声に出して読んだほうが作品が生きるタイプの絵本です。

 3冊目は2018年出版の『どしゃぶり』おーなり 由子/作 はた こうしろう/絵 講談社 です。まず表紙の傘をさした男の子の表情に子どもにとってのどしゃぶりの楽しさが詰まっています。雨降りって楽しいと身体中で表現する感じも物語への期待が高まります。元々外遊びをする男の子を描かせたら右に出るものがない印象のはたさんです。おーなりさんの気持ちの良い言葉と相まって楽しさが膨らみます。子どもも楽しめると思いますが、子ども時代の感覚を強く思い起こさせるのでおとなの方がもっと楽しいのかもしれません。楽しんでいるおとなを介して子どもが受け取るものがより大きくなる印象です。

 そして今回確認したら、『あめのひ』と『ぴっつんつん』は品切れで購入ができない状態でした。読み継がれるであろう絵本が品切れになっていくのが残念だと思いました。