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繰り返し

 読み聞かせで使う絵本に時代を超えた絵本を使うのは、それらの絵本が読み聞かせに使うための条件を満たしていて普遍的な内容ということだけでなく、時代を超えてなお輝きを失わないからということも理由です。絵本として魅力的な作品だということを感じられることは私たちにとってとても重要なことだと思います。ですから時代を超えた絵本を聞いて確かめることを飽きずに繰り返したいと考えています。実際時代を超える絵本は繰り返し聞くことが苦痛ではありません。むしろ飽きずに何度でも楽しめるというのが一つの基準だと考えています。

 幼児期の子どもは同じことを何度も繰り返すことを厭いません。それどころかおもちゃなども気に入ったらどんなにボロボロになっても手放さないというこだわりを見せることも珍しくありません。この幼児期特有の楽しみ方を満たすことも絵本の役割の一つです。知らない物語に出会っていく楽しみと同時に同じ話を繰り返し楽しむことも絵本の楽しみ方なのです。

 読み手は、なぜ子どもたちが同じ絵本を繰り返し楽しむのかの理由を知っていることではなく、繰り返し楽しんだ経験を持っていることが大事です。ありがたいことに時代を超えた絵本は子どもでなければ楽しめないという作品はありません。読み手の子ども時代の経験が問われるのではなく、誰かに読んでもらい絵を見ながら物語を受けとる経験をどれだけ持っているかが重要になります。絵を見ながら物語を受け取ることで絵本の本来の姿を見ることができるからです。読み手としてどう読むかではなく、絵本で物語を受け取ることの楽しさを知っていることが読み手の力になります。自分自身を振り返っても絵本の楽しさを伝えようと思って読んだことはなく、いつも物語の展開を新鮮な気持ちで追いかけているだけのような気がします。昔話がそうであるように何度繰り返してもこの展開しかないという絶対的なものが時代を超えた絵本には備わっている気がします。