ストーリーテリングは、語り始めたらたとえ何が起ころうと最後まで語らなければならないものです。途中で立ち往生しても語り手は物語の世界から目を逸らさずに結末まで物語を支え続けるのです。ですから物語の世界から出てしまわないようにイメージを固めてたとえ言葉が出てこなくてもイメージから引っ張り出せるようにするためにイメージを固めています。このイメージと一体化したものがストーリーテリングなのだと思います。ですから一般的に言われる覚えるという感覚とは少し違うと思います。覚える感覚に頼ると文章をまる覚えする感じになり、言葉が出てこなくなると物語を進める事ができなくなります。止まってしまったところから始める事ができずにスラスラと語れていたところからテープを巻き戻すように口の中でおさらいしていって言葉をとり戻すかテキストを見ないと戻せないというのは言葉だけでまる覚えしている時に起こりがちなことです。言葉が滞りなく出てくる安心感は語り手なら誰もが感じるものです。けれどその安心感を求めすぎて、文章でまる覚えしてしまうとストーリーテリングとして成り立たなくなるのです。ストーリーテリングに慣れるまではこの感覚を掴むことが難しいように思います。語り手はストーリーテリングを聞くことでイメージが固まっているストーリーテリングとまる覚えのものの違いを聞き分けられるようになります。イメージが固まっているストーリーテリングで物語を受け取った時のわかりやすさを体験すると自分が語る時の指針になり、それが上達につながります。そしてイメージが固まっていると物語が前面に出るので、語り手がどれだけ緊張していても物語が止まってしまっても物語が台無しにならないことがわかります。物語が主役になるにはやはりイメージを固めることが欠かせないと思います。