想像力

 想像力は生まれつき持っている力とは少し違うのではないかと思います。直接的なものや間接的なものを含めて様々な体験が形作るものなのだと感じています。そして特に読書は想像力がないと過不足なく内容を受け取ることが難しいものなのだと思います。そんな中で自分で読む楽しみへ誘うためにストーリーテリングをしている私たちにとって、想像力は欠かせないものだというのも偶然ではない気がします。言葉からイメージする力というのは想像力があってこそのものです。けれど想像しイメージとして映像化しても同じものを見ることは私たちのやり方では叶いません。イメージはそれぞれの頭の中にあって画像として共有するわけではないからです。その点、映画やアニメなどの動画や絵は作者のイメージを頭の中から出して自分以外の人が見えるようにすることです。そのためイメージを共有するにあたって見せられた側は受け取る際に準備するものはなく受け身で共有が可能です。

 けれどストーリーテリング は語り手の側にも聞き手の側にも想像力があることで成り立ちます。もちろん伝える側の方がより想像力が要求されますが、聞き手が映像を受け取る時のような受け身の状態だと受け取ることができないのだと思います。ストーリーテリングを楽しむためには、聞き慣れていくことが必要だと言われるのはそのためです。言葉から想像しイメージとして受け取ることはある程度訓練が必要です。そのためにも語り手はきちんとイメージを固めた物語を語る必要があります。語り手の想像力に裏打ちされたストーリーテリングは、映像に引けを取らない面白さがあります。そして想像力を介してイメージの受け渡しをする利点は、雑味が混じらないことです。イメージと言葉を同時に受け取ることでイメージを自分用にカスタマイズして受け取れるのです。これは読書だと一から言葉でイメージしていくのでより顕著に起こります。

 以前に比べて驚くほど年齢が低い段階から映像に触れて育つ今の子どもたちにもぜひ想像力を介してのやりとりのおもしろさを知ってほしいと思います。映像でなければ伝わらない圧倒的な世界観もありますが読書でなければ伝わらない世界観もあると思います。映像一択にならないことが子どもたちの世界を広げると思います。私たちが想像力を磨いてストーリーテリングに取り組むことで文字よりも動画や映像からの情報収集が優位に立ってきたとしても視覚情報のない物語の受け渡しは可能だと考えています。