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読み継がれる赤ちゃん絵本

 出張おはなしの会が軒並み中止になったので、おはなしの会で使ってから返すつもりで図書館から借りていた絵本を返しそびれていました。私は出張おはなしの会では赤ちゃんのクラスを受け持つことが多いので借りていた絵本は全て赤ちゃん絵本でした。以前も取り上げましたが、私たちは赤ちゃん絵本に関しては時代に評価され読み継がれる絵本はどれかを選びきれていません。そのためか借りていた絵本を返しながら、もう一度この絵本をちゃんと見つけ出せるだろうかとふと不安になりました。タイトルは記録してあっても作者まできちんと記録していないからです。物語絵本の方はタイトルだけでも見分けがつく位時代が評価を通した絵本として親しんできているのに比べて赤ちゃん絵本はタイトルでは見分けがつかないなぁと漠然と思いました。

 読み継がれる本というのは、その本自体の実力で生き残ります。絵本の歴史を振り返ると名作が次々生み出されアメリカの絵本の黄金期と呼ばれる時代があったりしますが、その時期出版された絵本全てが残れたわけではありません。そして戦後日本は出版業界の特色のせいか、月刊誌など定期的に配本される形で様々な絵本が世に出ました。岩波子どもの本を筆頭に福音館のこどものともなど日本の作家の絵本のみならず翻訳絵本を出版し日本の子どもたちの絵本の世界を広げ充実させてきました。

 その流れで福音館の赤ちゃん絵本は月刊誌の012というレーベルで新しい絵本が毎月出版されています。そしてその中から出版社の判断でハードカバー化して出版され続ける本が決まっていきます。不思議なことにハードカバー化されたものを文句なしに私たちが支持できるかといえばそうでもないのです。意見が合うことがあれば合わないこともあるといった感じでしょうか。逆に新刊にとても魅力的なものがあってもハードカバー化されないこともあり、読み継いでいきたい赤ちゃん絵本を決め兼ねる原因にもなっています。福音館の月刊誌は低価格で良質な絵本を子どもたちに届けるという点で非常に有効な方法だと思います。けれど毎月出版し続けるのは出版社にとって非常に難しいことなのだと思います。時代を越えるためには突出した魅力が必要です。そして魅力が存分に発揮されるのはそのシリーズが始まったときの高い志の影響からか、立ち上げの時期の絵本に現れることが多いと感じています。ですから012も創刊時から最近までの作品を比べると最初の立ち上げの際の作品に魅力を感じています。