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本が一番輝く場を想像する

 自分が読書をする場合、気に入った物語に出会うと同じ作者の作品を読んでみたくなったという体験は誰でもあると思います。作者買いという言い方をする程お気に入りの作者ができることもあります。けれど読み聞かせの場合、作者だけで判断するのは難しいと考えています。作品の完成度の問題だけではなく、集団の読み聞かせは集団で楽しむための制限があるからです。

 加えて魅力的な作品を生み出している作者は、その才能を求められ様々なジャンルの作品に取り組んでいることがあります。絵本でも物語絵本で作品を発表した作家がその後、科学絵本や赤ちゃん絵本といった違うタイプの絵本を作ったり、絵本ではなく童話などといわれる読み物を作ることは珍しいことではありません。そもそも作者にとってそれらの違いは創作する上で些細なことなのかもしれません。そのため読者の方で欲しいタイプのものを見分ける必要が出てきます。思いつくままにあげても、中川李枝子さん、長谷川摂子さん、角野栄子さんなど絵本から読み物まで幅広く作品を作られている作家はたくさんいます。

 そして絵本と読み物のどちらでも使えるような作品の場合、文章が多い絵本なのか挿絵が多い読み物なのか、読んで確かめてみても迷うことがあります。この場合、その物語が一番映える形を考えることで判断しています。言い方を変えると自分で読んだほうが楽しめるのか、読んでもらった方が楽しめるかを考えます。それでも親子で楽しむことは一般の読み聞かせとは別物なので、自分で読んだ方が楽しいと判断した作品でも親子で楽しむ時に限り読んでもらっても楽しめると判断することもあります。

 こういったことを続けていると、子どもの本を読む時に、どこで使えるだろうと無意識で考えるようになってきます。職業病的な習慣だと思われるかもしれませんが、それはその本が一番輝く場を想像することで、とても幸せな時間だと感じています。選ぶことが大変だという話をよく聞きますが、締め切りが決まっていてそこに合わせて選ぼうとするから大変なのではないかと感じています。本は、読んでもらって完成するものです。その完成する場を想像していくことが本来の選ぶことなのだと思います。ひとつひとつの本の映える場を想像し、読み聞かせをする場とのすり合わせをすれば選ぶことはさほど難しいことはありません。普段の読書でその本の映える場を想像するというちょっとした習慣できっと選ぶことが苦にならなくなるのではないかと考えています。