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物語の力を活かすために

 物語の力というとどちらかというと大作をイメージする方もいらっしゃるかもしれません。 けれど物語と一口にいっても小品から大作まで様々な作品があります。幼い子どもたちが楽しむ絵本なども物語の一翼を担っています。このブログで私が物語といってイメージしているものは現実から切り離された別世界と言い換えられます。『幼い子の文学』瀬田貞二/著 中公新書 で「幼い子が喜ぶお話には単純な構造上のパターンがあって,それは『行って帰る』ということではないか」と述べられていますが、お話の構造だけでなく実際物語を楽しむことも物語の中へ出かけてまた現実に帰ってくることだと感じているからです。ですからある意味別世界を堪能することが物語を楽しむことだと捉えています。

 そして読み聞かせやストーリーテリング で別世界を堪能するには、場当たり的な展開ではその世界観が揺らいで物語の中に留まることが難しくなります。物語の展開に納得できずに「あれ?」とか「なぜ?」と思った時には別世界から戻ってしまっています。加えて読み聞かせやストーリーテリング で物語を渡している時は物語が始まったら止まることができずページを遡って確かめることもできないため途中で出たり入ったりする事に向いていません。

 だからこそ私たちは絵本やテキストを見極め選ぶ必要があると考えています。子どもたちに物語をうまく渡せなかった時まず考えなければならないのは渡そうとした物語の世界観に綻びがなかったかどうかです。それには作品の作りと渡す際の読み手や語り手の姿勢の両方が関わっていますが特に作品を見極めることが大事です。時代を超えて支持されてきた絵本や語る事で伝承されてきた昔話は作りに関してはしっかりした世界観が構築されていると感じています。そして読んでどう感じたか、どう思ったかではなく物語に身を任せても違和感がないかに注目することを習慣にすることで作品を見極める力がつくと考えています。