小学生とストーリーテリング その1

 私たちの出張おはなしの会に依頼をいただくのは保育園が多いです。そのため私たちは小学生にストーリーテリングをする機会はさほど多くはありません。けれど小学生がストーリーテリングを聞く機会を増やしたいと考えています。

 今の子どもたちを見ていると昔話に出会う機会が減っているように見受けられます。昔話は人間の生きる知恵が詰まった過去からの贈り物といった側面があります。人が生きていくことの本質は時代が変わっても大きく変わっていないからです。そして昔話の構造は教訓的なものが前面に出ることはなく起こったことを起こった形として物語っているので聞き手の人生経験や価値観によって開く扉が違う作りになっていて聞き手を選ばないところがあります。そのため聞いた時よりも時間が経ってからその効果を感じることがあるのだと思います。主人公が生きることを肯定的に捉え何が起ころうとも前に進んでいく姿を繰り返し聞いておくことは子どもたちの土台を作る助けになると思います。

 加えてストーリーテリングは聞く読書と言われるように言葉からイメージし物語の筋を追う訓練に最適です。言葉からイメージできないと登場人物や場面設定が理解できず物語についていけません。そして物語が展開していくことにおいて何が大事なのかをきちんと受け取っていかないと筋を追うことができません。ストーリーテリングにおいては物語の中で自分にとって気になる事柄が起きてもそれが物語の展開にさほど関係なければそこに注目しないことが物語の展開についていくことです。自分で読んでいたら気になる場面が重要な場面になるので筋を追うこと自体が上達するとは限りません。そのため小学生、特に低学年の子どもたちに対してストーリーテリングをする機会を増やすと読む力の後押しをすると考えています。

 また何より物語を聞くことはとても楽しいことです。ストーリーテリングはその時の語り手と聞き手が作り上げる一回きりの物語です。同じことは二度と起こらないという真剣勝負です。この楽しみを子どもたちにもぜひ知って欲しいと思っています。読み聞かせのボランティアグループが各学校に作られるようになって、私たちが呼ばれることが減ったと感じていますが、私たちにしかできないことはあると考えています。