小学生とストーリーテリング  その2

 私がおはなしざしきわらしの会をはじめた理由に子どもたちに本を読んで欲しい、そして本を読む仲間が増えていくといいなあという漠然とした願いがありました。本を読むことはこんなに楽しいのに本を読まないのは、この楽しみを知らないからではないかという今思えばかなり自己中心的な発想だったなあと思います。それでも歳を重ねた今もこの思いは変わないから今でも読書の楽しさの啓蒙活動をしているのかなあと思っています。そして活動を継続することで読書の楽しさを伝えるためのやり方を探ってきました。押し付けになっては返って逆効果だからです。

 私たちのやり方は物語を聞いて受け取れるようにするということを中心に据えています。物語を物語として楽しむことというのは意外と慣れが必要です。そのため乳幼児期は絵本を繰り返し読んでもらい聞くことで物語を聞いて受け取ることが十分できることを意識しています。そして小学生になると聞く力と読む力の差を使って読む力につなげようと考えています。読みはじめの子どもたちが自分で読める物語と本当に楽しめる物語が一致しないところに注目し、自分で読むには難しいと感じる本を読むことで物語への期待感を子どもたちが無くさないことを意識しています。読みはじめの際には自分で読める本だけでは物足りず読むことへの意欲が維持できないと思うからです。そのため年相応に楽しめる本を読んで渡そう、語って渡そうとしています。そして子どもが読んでもらった本や聞いた物語を自分で読んでみようとすると一度聞いて受け取っている物語なので字だけを判別していく読み方から単語や文章を意識した読み方ができて読めるようになっていくことを期待してきました。

 けれど年々子どもたちの聞く力が減っていると感じています。絵本の読み聞かせは生活を共にしている人が読んでくれることが欠かせません。私たちでは家庭で行なわれるほどの回数を読んであげることができないからです。そして十分読んでもらっていないまま小学生になっている子が増えてきていると感じています。そのため聞く力と読む力の差を埋める私たちのやり方だけでは、如何ともし難い状況になってきています。そのため聞く力がついていない子どもたちにどう対応していけばいいのかを考える時期が来ていると思っています。

 当たり前のことですが育つ過程で渡し損ねた事は過去に戻ってやり直す事は叶いません。渡し損ねたことを現時点で渡すやり方を工夫する必要があります。読書でいえば暗記するほど繰り返し絵本を読んでもらうことからやり直すには圧倒的に時間が足りない小学生にどうやって読んでもらわなかった分を補うのかということになります。そこで物語を聞く力を育てるのにストーリーテリングから始めるのもひとつのやり方ではないかと考えています。私たちの今までの経験では対応しきれない、今の小学生に合わせたプログラムを考えていきたいと思っています。