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うまく読もうとしない

 おはなしざしきわらしの会のメンバー以外の絵本の読み聞かせに取り組んでいる人たちの読み聞かせを聞くと読み間違えないことや読み方に心を砕いていることが伝わってくることが多いと感じています。読み方に集中した読み聞かせは、聞き手に読み方の発表会を聞いているような錯覚を起こさせます。ただ子どもたちは上手な読み方を聞いて感心したくて読み聞かせを聞くのではないと思っています。もちろんおとな同士で聞き合っている分にはこれはこれで1つの楽しみではあると思います。けれど子どもに聞かせる時は読み方の発表会的な読み方では子どもたちを物語の中に誘う力が弱いと感じています。

 子どもたちは読み聞かせを聞こうとする時、絵本という物語の世界に入りたいと思っているのだと考えています。ですから物語の中に留める力が弱い読み方は子どもに向けての読み聞かせでは物足りないと思っています。子どもたちがすんなり物語の中に入り物語の中に留まるには物語を物語として渡すことが欠かせません。そのためなんとか引き込もうとして印象的な場面を強調したり声を駆使して興味を引く必要はないと考えています。そんなことをしても一瞬気を引くことができるだけで物語の中に留まって物語を物語として楽しむことにならないからです。物語を物語として渡すことは、誰が何をしたという展開を物語に身を任せて伝えるだけです。なんの捻りもない単純なことだと考えています。けれどこれが慣れないと難しいことのようで伝えようと思うあまり物語のバランスを崩すことが多いと感じています。特に今まで工夫を凝らして読んでいらした方は物語を物語として伝える読み方は何もしていない感じがして心許ないのだと推測しています。ですから物語を物語として受け取ることに慣れていくところからはじめて欲しいと考えています。おはなしざしきわらしの会では勉強会のグループが現在3つあります。そしてそれぞれの勉強会は不思議と特色があります。その違いは読み聞かせを聞く経験値の差ではないかと思っています。特に子どもに読み聞かせている現場で子供と一緒に読み聞かせを聞いた経験を積んだグループは物語を物語として伝えることが苦もなくできるようになったと思います。そして子どもが物語を受け取る様子とセットで読み方を聞いているのでうまく読もうという気持ちと無縁でいられたのではないかと想像しています。今読むことがうまくいかないと感じていらっしゃる方は聞くところからはじめると問題点が見えてくるかもしれません。