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赤ちゃん絵本の読み方

 講座で子育て世代のお母さんと話をしていて気がついたのですが、絵本の情報交換をする時難しいのは、子どもが喜んだという結果の中に読み方も影響している点です。他の子が喜んだ絵本をなぜうちの子は喜ばないのかと考えた時に、子どもの感性だけでは説明しきれない部分があると思いました。赤ちゃんに限らず人間にとって声も興味を引く条件のひとつです。そして他のお母さんが子どもに読んでいる姿を見る機会はほとんどありません。子どもがよく聞いた理由は子どもがどう反応したのか、ひいてはどう読んでいたのかまで含めないとわからないと感じました。こう考えるとどう読むんですかという質問の意味合いが変わってくるなあと思います。読み方は問題ではないという答えだけでは、お母さんたちの質問に答えられていないのかもしれないと初めて思いました。特に赤ちゃん絵本に関しては声の力が大きいと感じています。その中でも昨日取り上げた『ごぶごぶ ごぼごぼ』や『もいもい』といった音で表現する絵本は声の使い方で印象が大きく変わります。

 おはなしざしきわらしの会ではストーリーテリングが基本なので、絵本も基本的には物語絵本を読んでいます。ですからストーリーテリングでイメージを固める作業の部分が絵になっているのが絵本で絵に合わせて言葉を載せるという読み方をしてきました。赤ちゃん絵本は、赤ちゃんを対象とした読み聞かせに対する要望に応えた形で取り組んでいて、赤ちゃん絵本を読みたいメンバーが読んでいるという状態で読み方について物語絵本のような確固とした方針を持っていません。けれど赤ちゃん絵本はその力を引き出すために物語絵本より読み方の比重が高いのだと思います。

 赤ちゃん絵本は作りとして文章が圧倒的に足りません。読み手が言葉を自由に足して赤ちゃんとコミュニケーションを図ることを織り込んで作られているからです。そこで読み方としては言葉の足し方を磨く必要があります。ポイントは聞き手に注目して欲しいものを意識して言葉を足すことと、聞き手が言葉を発したくなるような言葉がけです。具体的には文面にある言葉を取り出して読み手が繰り返したり言い換えることや質問を混ぜたりすることが挙げられます。加えて物語絵本と違って明るい声が望ましいと思います。母親が赤ちゃんに声がけをする時に出す声や話し方は世界共通のものとして「マザリーズ」と名付けられています。「マザリーズ」が子どもの注意と興味を引く理由は赤ちゃんが声や口調から愛情などの感情に気づくからといわれています。この「マザリーズ」が赤ちゃん絵本を読むときの声や言い方の参考になります。具体的には普段話す声よりもちょっと高めの声を使いゆったりとした口調で抑揚をつけるといった感じでしょうか。ただあまり大袈裟にするとそれはそれで絵本より読み手への注目度が高くなってしまい絵本を使っている意味がなくなるので加減が必要です。また読み手の本来の喋り方に対して変化させるので個人差がありキラキラ声の人に向いている訳ではありません。大事なのは絵本で、それを子どもに渡そうという気持ちであることは変わらないと考えています。