聞く機会

 ストーリーテリングを始めたばかりの人はイメージを固めることに苦戦することが多いのですが、今までうまく説明できていなかったのかもしれないと思います。ただ自分が教えてもらった時も手取り足取り教わった訳ではなく、勉強会やおはなしの会に足繁く通って時間をかけて感覚的に覚えていったので言葉で説明するには限界があるのではないかと思っていました。実際ストーリーテリングをたくさん聞くと聞きやすい語りと聞くのに忍耐がいる語りがあることは理由が分からなくても感じることができます。また勉強会でもらってきたアドバイスも他の人のものも一緒に聞くので、大事なのはイメージとか、絵を描く習慣があるからイメージを固めるのが上手とか、イメージがスカスカすぎるとか、当時の私にとっては断片的すぎてわかったようなわからないような状態でした。けれど続けてきて思うのは先生がおっしゃっていたことはストーリーテリングの本質でそれ以上でもそれ以下でもないことだったということです。その当時漠然としか捉えられなかったのは私が語り手として未熟すぎたからだったと今思います。

 私がストーリーテリングの手ほどきを受けたのは千葉県に住んでいる時でしたので、家庭文庫が珍しいものではなく文庫でおはなしをする人たちがたくさんいました。そういった人たちが後進の育成のために聞き手を語り手に絞ったおはなしの会なども定期的に開かれていて、聞く機会に恵まれていました。そして後進の育成をしているような先生方同士のつながりもあり千葉県以外でのおはなしの会を聞く機会もありました。

 けれど上田市でストーリーテリングを始める人のためにストーリーテリングを聞く機会を作ることができないまま勉強会をしています。聞く機会が少ない分、説明できることが求められるのだろうと考えています。もちろん聞くに勝ることはないので、聞く機会を増やす努力は必要だと考えています。けれどこの環境だと説明も欠かせないのだと思っています。家庭文庫の減少と共に、日常的に子どもに語っている語り手が減ってきています。そのため以前行っていた語り手をお招きしておはなしの会をすることも私たちが聞きたい語り方をする人が減ったため難しくなっています。そもそもストーリーテリングをする人自体が減っていますが、今ストーリーテリングが果たす役割は逆に大きくなっていると感じています。聞かせてもらって育ててもらったのですから聞いてもらう機会を増やす時がきているのかもしれません。