· 

変化にじっと目を凝らすと

 時代の変化に合わせようとすると、新しい機器を使ったアプローチが注目されがちです。コロナ対応が必要な折でもあり、対面を避けオンラインに活路を見出そうという動きが活発化しているように思います。緊急避難的な形で始まったオンラインでの読み聞かせも工夫を凝らしたものを見かけるようになりました。オンラインでの読み聞かせには2パターンあり、YouTubeなどを使い読み聞かせを録画したものを配信しているものとスカイプなどを使ったテレビ電話での読み聞かせです。ただテレビ電話を使ったものはその時限りのものです。やりとりしている相手以外は見ることができませんし保存ができなません。私的なものとして使われているので、私たちが目にするのはもっぱら録画の配信です。

 この読み聞かせ動画を見ているとオンラインという新しいやり方にも関わらず既視感を覚えます。録音媒体は時代と共にカセットテープからCDへと変化しましたが音源が絵本とセットで販売されてきた流れの一つだと感じるからです。そして録音する際に声だけでは寂しいので音楽を入れ込んだり効果音を入れたりということが起こったことと同様にただ絵本の画面を見せていても寂しいのでアングルを変えたりなど工夫が凝らされてきているのも同じ括りのものだと感じさせます。そのうちNHKのテレビ絵本シリーズのような動画になるのもの時間の問題だと感じます。実はテレビ、特に教育テレビでは繰り返し試みられてきた手法でもあるからです。

 そうそう新しいものは出てこないのだという思いと共に、私たちが目指しているものとの違いを考えさせられています。過去にコロナ対応のような切実さはなかったとはいえ、テープでの読み聞かせを退けてきた私たちは、再度録音と向きうことになったと感じています。そして状況が変わっても対面で読むことでしかできないことがあると感じています。それは絵本の力を信じ、子どもたちの息遣いを感じてその成長に寄り添うことができることだと考えています。子どもたちがうまく受け取れない場合、録音や録画で対応すると、より興味を引こうとして刺激を強くしていきます。けれど対面だと刺激を強くするのではなく絵本の力と聞き手同士の集団の力、そして聞く回数を重ねることで対応していけます。私たちのしていることは即効性はなく地味な活動です。けれど愚直に続けることで子どもたちの成長に寄り添うことができます。ドラマチックなことは起こりませんが、それでも子どもたちが育っていく様子に部分的にでも立ち会えることは希望をもらっている感じがします。