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伝えていくこと

 絵本に関しても子育てを経験したからこそ見えてきたものがあると感じています。そしてその気付きを伝えていくことも実は大事なのではないかと思っています。私自身、自分が子育てしているときは親世代の子育ての知識は時代に合わないと思ってきました。それは母乳や離乳食に始まり医療や保育関係者に指導されることと親の指摘が異なっていたことが大きかったと思います。そして専門家の言葉に沿っていく方が間違いがないと思ってきました。けれど子どもが育っていく過程の様々なことは専門家もよくわかっているので言葉を濁すことが多く曖昧な答えしかもらえず、途方に暮れることも多かった気がします。そんな時、本当は経験者の一人としての親世代の言葉は助けになるはずでした。けれど時代に合わないという先入観が邪魔をして素直に受け取れずにもったいなかったと今思います。おむつが取れなくて悩んでいる時に「おとなになってもおむつをしている人はいない」というアドバイスをされた時には人ごとだと思ってと逆にストレスを溜めていました。今になればそんなにイライラしなくても大丈夫な問題だと言ってもらったのだと思えますが、当時はアドバイスの真意を受け取れませんでした。そして聞く耳を持たなかった自分を思い出すことができるので、子育て世代にアドバイスをすること自体必要かどうか迷ってきました。友人などに「誰があなたの意見を聞きたいと言っているの」と厳しい言葉をもらうこともあり聞かれない限り黙っているのが正解かもしれないと思ってきました。

 けれど最近聞いてくれるまで待っていては必要としている人に届かないのではないかと思うようになりました。SNSの広まりにつれて同意見の狭いコミュニティーだけで情報収集が事足りていると思う人が増えてきています。聞いてほしい人ほど聞いてくれない状態は以前より強まっていると感じています。思うように受け取ってもらえないとしても大事なことは発信していかなければ誰の目にもふれず判断すらされずに存在しないものになってしまいます。私たちが発信したことを即生かしてくれなくてもいいのではないかと思うのです。知った上で必要かどうか判断してもらうことが大事だと思います。

 私たちは絵本の力を知っています。そして人が人として育つ上で必要不可欠なものだと感じています。私たちの知っていることを伝えることを怖がってはいけないのだと思います。この情報過多の時代、発信すること自体に私たちが思っているほどの重みはありません。ですからまずは発信するところから始めるしかないと考えています。