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たのしいふゆごもり

 急に寒くなって一気に冬がやってきた感じがします。ここのところ毎年今年のお天気は変だと言い続けている気がします。春と秋が行方不明になった感じでダイナミックな気候の変化に体が戸惑うことが増えてきました。昨日も雪の気配を感じる曇り方で辛うじて雨でしたがスタッドレスタイヤの心配をした方がいいのかもしれないと思ってしまいました。天高く馬肥ゆるといいならわしてきた秋が恋しいです。

 冬のおとづれを感じる今のような季節に読みたくなる絵本があります。『たのしいふゆごもり』片山 令子/作 片山 健/絵 福音館書店 です。これはふゆごもりの準備をするくまの親子のお話です。お母さんと二人で暮らすこぐまがふゆごもりの用意に出かけた1日が描かれます。こぐまもお母さんと一緒に木の実を集めたり蜂蜜をとったりするのですが、こぐまの言動はなんとも子どもらしくて愛らしいので読んでいる側もほっこりします。そして秋の野山の風景が色鮮やかに描かれ写実的ではない描写ですが秋が余すところなく伝わってきます。そして雪とともに始まる本格的な冬の訪れが説得力のある絵によって強く伝わってきます。音もなく降り積もる雪の感じは厳しい冬を感じさせるだけでなく美しくもあり絵の力を感じます。飢えないだけの食料と暖かい寝床そしてお母さんの存在というこぐまにとって安心をもたらすものがてらうことなく語られていき、幸せという言葉を使うことなく幸せを感じさせてくれます。この絵本の初版は1991年ですから今年でちょうど30年。初版の時に出会っているので時代を越えていくところを見せてくれた絵本でもあります。この絵本でなければ味わえないこの唯一無二の感じが時代を越えるということなのだと今思います。読み聞かせで渡そうとするとボリュームがあるので躊躇される方もいらっしゃるかもしれませんが、これからも子どもたちに渡していきたい絵本であり、自分自身のためにも読みたい絵本です。