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読み聞かせで何を伝えているのか

 絵本講座をしていると思いがけない出会いがあって、思いがけない質問をもらうことがあるので、そういう時はもう一度自分の考えを整理する良い機会になります。絵本の読み聞かせをする理由などもそれぞれで、言葉にしてみると確かにそうなのだけれど、本当にそれでいいのかと思うことも多々あります。また昨日も絵本自体を楽しむという言い方で読み聞かせを説明しながら、うまく伝えきれていないと歯痒い思いをしました。そしてどう伝えればよかったのかと、もやもやした気分を引きずっています。

 突き詰めて考えると絵本から受けとるものは読み手によって違います。そして読書は本来読んでいる人が受け取る人です。けれど読み聞かせの場合は読み手と受け取り手が分かれるという読書という行為の中では例外的なことが起こっています。そのために読み手と受け取り手の感じ方を同一のものとして読むのが、親子の読み聞かせなのだと思います。この一体感が親子の読み聞かせの醍醐味であり楽しみの一つなのだと考えています。そして集団に対する読み聞かせは、感じ方を揃えるのではなく絵を主役にすることで読み手と受け取り手の同一を図ることなのだと思います。絵から呼び起こされる感覚というのは読み手と切り離せないものですが、絵からの情報以上のものを盛り込まないのが集団に対する読み方なのだと考えています。ここで注意して欲しいのは絵本からの情報ではなく絵からの情報だという点です。おとなは読書という経験を積んできているので本を読むことはその本を読解しメッセージを受け取ることを無自覚でしています。けれど絵本からメッセージを汲み上げることは感じ方に踏み込むことでもあると思います。そのため絵に任せるというのは感じ方に踏み込みすぎないためにも作用していると考えています。例えば『たのしいふゆごもり』で冬支度のために入った森が美しく色づいている様子が描かれている絵を見て読み手が冬が近い森の澄んだ冷たい空気などを感じながら読むことは絵からの情報の範疇ですが、その絵から自然の厳しさや自然の豊かさを伝えようとすると絵以上の情報を盛り込むことになりメッセージを汲み上げていると感じます。聞き手は次々と読まれていく文章と絵を一体化させて物語を受け取っています。読み手が読み込んで受け取ったものを混ぜ込む余地がないと感じています。やはり絵本は絵と文章を同時に楽しんでみないとどう伝わるのかは分かりにくのだとは思います。読み聞かせを聞く体験がどれだけ重要なのか改めて感じました。