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昔話の色

 ストーリーテリングをしていると昔話にはその物語が生まれた風土が影響していると感じます。グリム童話のように1版から7版まで変化を追えるような作品を見ていると再話者の感性も混じり込むのかもしれないとも思いますが、それでも風土ひいては民族、宗教、国といった色があると感じます。そしてそれらは言語が基盤となって形作られているのだと思います。歴史を振り返るまでもなく今でも民族の統一のために言葉を取り上げ思想コントロールするという手段が使われることがあります。またEUのように加盟国同士、国という独立性を保ちつつ経済だけでなく社会や政治など様々な分野でひとつにまとまろうとする動きがある一方、強烈な民族主義をよりどころにしている動きもありどちらも一長一短で難しい問題だと思います。

 けれど『スーホの白い馬』『きんいろのしか』『プンク マインチャ』をまとめて聞いたら、欧米の昔話との違いを強く感じました。宗教観の違いもあるのでしょうが、今回読んだ絵本に関してはどれも善と悪の対立といった明快な分け方がされていないと感じさせられることが印象的でした。そして人間と他の動物との境界線が欧米のものに比べて曖昧だと思いました。偶然かもしれませんがこの3つの作品はどれも主人公が人間だけではないと思えるからです。そして人間が主人公の物語で主人公に寄り添い助ける役を動物がする話をグリムなどの昔話でぱっと思い浮かべることができませんでした。欧米の昔話では手を差し伸べるのは動物ではなく人に姿を変えた神様だったり魔法使いだったりします。そしてその恩恵を受けられるかのテストが組み込まれ相応しい働きを主人公がした場合に助けてもらえるという作りが多いように思います。これはこれで明快で説得力があり、これぞ昔話だと思ってきました。けれど今回モンゴルやインド、ネパールの昔話にふれて趣きは違いますが魅力的だと感じました。ストーリーテリングで自分が語れるかと考えるとハードルが高いですが、まとめて読んでみたいと思います。昔話を読むときはテキストとして読む癖がついているので最初から除外していてまともに読んだことがなかったのです。どんな昔話と出会えるか楽しみです。