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時代を越えて

 今回子ども時代に親しんでいた絵本を読み聞かせで聞いて強く感じたのは手がかかっているということです。再話者も画家も納得いくまでとことん取り組んだのであろう完成度の高さに改めて心奪われました。これだけの作品を生み出していた1960年代から70年代は日本においても絵本の黄金期だったのかもしれないと思います。子ども時代に親しんだ絵本が今も古びないというまさに時代が評価を通していく様を見ることができたことはとても幸せなことだと感じています。そして時代が評価を通すような絵本が生み出され親しむことができる時代に生まれ育った幸運を感じています。

 反面新しく出版される絵本に関しては目を見張るような完成度の高い作品が減っているように思います。もちろん1960年代でも出版される絵本全てが時代を越えるような絵本ではなかったことは承知しています。また出版不況と言われるようになって長いので出版業界自体が経営的に厳しい状況にさらされ疲弊していることも配慮しなければいけないとは思います。加えて「限りある子ども時代に読むべき本は既に全て出版されている」とジョーン・エイキンが書いているように、質を問うこと自体が困難な道であることもわかっています。けれどそれでも私たちは質を問いたいと考えています。

 私たちのように読み聞かせをすることで子どもたちと関わり続ける立場にいても、絵本に目新しさを求め新しい本を混ぜる方がいいのではないかと思うことがあります。けれど私たちこそ、絵本を選ぶ際に時代を越えていける絵本なのかという質を問う物差しを持ち続けることが大事だと改めて強く思いました。