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ぽぱーぺぽぴぱっぷ

 『ぽぱーぺぽぴぱっぷ』谷川 俊太郎/文 おかざき けんじろう/絵 クレヨンハウス を保育園で2歳児のクラスに読み聞かせをしました。こういった音の本はおとなが考えるより子どもたちは柔軟に受け止め楽しむので楽しんでくれるだろうという予想はしていましたが、想像以上になんとか一緒に言おうとして微笑ましかったです。ここまで一所懸命に言おうとするのを見てこの絵本の作られた過程に興味を持ちました。

 調べてみると この作品はまず先に絵が描かれ、その絵に谷川さんが言葉をつけたそうです。絵をかいた岡崎さんは抽象画から立体、ランドスケープまで手がける造形作家であり美術評論家です。そして絵本に関してご自身の定義をお持ちです。「絵本は12見開きなら12見開きの別の記述が存在している。それぞれの記述は独立している。つまり時間空間の連続性、共通性が前提とされていない。あるいはそれが同じ対象を記述しているということも前提とされていない。しかし一方でそれら12見開きには、なんらかの共通性、連続性が確保されていなければならない。」というのが岡崎さんの定義です。そしてページをめくると違う世界が見えてくるというのが絵本のおもしろさだとインタビューに答えていらっしゃいます。またこの『ぽぱーぺぽぴぱっぷ』を手がけられた時に参考にしたのが飼っていらっしゃる犬だったそうです。飼い犬とコミュニケーションを取る中で人間と動物の知性は一緒だと考えるようになり、犬や猫が喜ぶ本を作れば、人間の子どもも喜ぶのではないかと考えられたそうです。そこで犬が興味を持つ、丸いとか尖っているとかの形を作り、色の認識が弱い犬でも認識できる色をつけていったそうです。そして岡崎さんは谷川さんがつけた言葉に対して谷川さんが最初の子どもだったと考えていらっしゃいます。「おそらく谷川少年は絵を見て あ 生きものがいると思って喋りかけたのでしょう。この2つの生きものが挨拶をして、対話をしているという情感を得た。だから1見開きの絵に当てられた言葉は対話になっていました。」とやはりインタビューで答えていらっしゃいます。

 調べてみて子どもたちが一緒に言いたがったのは、この感覚なのかもしれないと思いました。子どもたちはこの作品の場合、同じ言葉を繰り返したいのではなく、対話に加わりたいという思いがあって、だからこそ復唱することより言葉を発することが先に立っていたのだと思います。親切のつもりで復唱しやすいように短く切って読んではいけないパターンだったのだと調べてから反省しました。読み聞かせは子どもと楽しむことがやっぱり大事です。おとなのように知識の助けを借りずにちゃんと絵本の本質を捕まえているのだと感心しました。