· 

おもしろいから始めたい!

 現在進行形の子育て世代の方と話をすると、絵本を選ぶことを楽しいと感じていらっしゃらないのではないかと感じることがあります。それは資格が重要視される社会となり専門性に対する感覚が私たちの世代より強くなってきていることと無縁ではない気がしています。そして感覚的なことより科学的に客観性があることを好ましいと感じる傾向もあるからではないかと思います。子育ての時期の絵本の役割は多岐にわたり、育もうとする要素によっては専門家の意見に従いたいという気持ちもわかります。何しろ我が子に、より満ち足りた人生を歩んでほしいと願うのはどの親も皆同じです。そして子どもの才能を見つけ伸ばしてあげたい、同年代の競争に勝ち抜くための力をつけてあげたいということと絵本を関連づけたいという思いもよくわかります。けれど絵本を楽しんで選べないことは読み聞かせ自体が楽しいものという感覚から遠ざけてしまう気がします。知的好奇心を刺激することや知識をつけることにつながるとしても絵本の魅力は楽しみと共にあると考えています。そのためには読み手がその絵本をおもしろいと思っていることが欠かせないと感じています。

 これは親子だけでなく、集団への読み聞かせをしている私たちにも言えることです。子どもたちは読み手の本音を嗅ぎ分ける天才です。子どもたちが絵本に夢中になるためには、絵本の力と読み手がおもしろいと思っていることの両方の力が必要です。読み聞かせで実績がある本だからという選び方をしていると読み手の感性が置き去りになることがあります。これは望ましいことではないと感じています。そして絵本は読んでもらうとその価値がわかるというのはその絵本のおもしろさを知っている人が読むからということと無縁ではないと思います。だからこそ絵本を読んでもらい自分が聞き手になる機会を持つことが大事だと考えています。