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好きと一口にいうけれど

 お気に入りの本を持参して参加者がそれを紹介するという集まりを月1回のペースで10年ほどやっています。一応読書会という括りに入るかと思いますが、あまり気負わずに1ヶ月どんなふうに過ごしたかを「元気だった?」「うん元気だったよ」というやりとりの代わりに読んだ本の話をしている感じです。

 絵本の話をする時も「好きな絵本はなんですか?」という質問には答えにくくても、今お気に入りの絵本とか、最近読んだ絵本という切り口なら、答えやすいと感じています。「好きな絵本はなんですか?」と聞かれると答えに窮することが多いのは自分にとって一番好きを考えてしまうからだと思います。そして絵本と長く付き合っていると、どこがおもしろいんだろうと思っていた絵本のおもしろさが急にわかったりするので余計自分の中で順位をつけにくい気がします。時代が評価を通した絵本というのは、おもしろいと思わなかった作品でもある時突然その魅力がわかるということが起こりやすいと感じています。そしてその魅力がわかっている人がその絵本を子どもに渡すことができるのだと考えています。こういう本が子どもたちが好む本なのだと頭で思っているうちは、残念ながらその絵本の読み手には向かないと思います。

 けれど好きな絵本という言葉は意外とよく使われる言葉です。絵本の読み聞かせについて説明された本などでよく見かけるルールに、読み手が好きな絵本を読みましょうというのがあります。この場合の好きな絵本というのはその絵本の魅力がどこなのかがわかっているということで、その魅力が十分わかっていたらその魅力を分け合える相手も自ずと見えてくるということも含めての好きな絵本という言い方なのだと思います。最近読んだ本といった感じの好きや自分の中で一番好きな本といった感じの好きとはまたちょっと違う意味合いが含まれていると感じています。