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絵本が教えてくれた

 今まで、おはなしざしきわらしの会のメンバーにしか伝えていなかった物語を伝えるための絵本の読み聞かせについて講座で話しています。それこそおはなしざしきわらしの会の勉強会ではお念仏のようにいつもいつも言っていることなので伝えることに関しては問題がないのですが、その伝わりにくさに驚いています。

 考えてみると今私がお伝えしていることは、時間をかけて体得したことです。子ども時代の経験も含めて特に言語化することなく自分の中に降り積もっていたものを必要に応じて言語化している感じです。そのため30年前と今では言い方も違ってきていて、ずっと付き合ってきてくれているメンバーはその変化も感じてくれているのだと思います。そしてその変化は階段を昇るように、より核心へとつながる道のような気がします。それはなんとなくわかっているのだけれど言葉にならない感じであり、こっちの方がいいと思うけれど理由はうまく説明できないといった感じで、実はその状態は今でも続いています。そんな中でああこういうことだと閃いた言葉をメンバーには伝えてきました。けれどまた時間が経つともう少し考えていることにぴったりの説明が見つかったりするということの繰り返しだったと思いますし、多分これからもそうなのだと考えています。

 ですからメンバーに伝わりやすいのは当たり前で、段階を踏んでいるからだと気がつきました。読み聞かせについて考えてきた年月が違うのです。それも集団に対するという特化した視点で勉強会を重ねてきました。勉強会は読むトレーニングの場ではなくむしろ聞くトレーニングの場のため、メンバーは文章を聞きながら絵を見て物語を受け取ることが身についていました。それがメンバーに私の話が伝わりやすい理由だったのです。だから今回初めて講座に参加した人へ一足飛びに今の掴んでいることを伝えても難しいと言われるのももっともだと思います。それだけ私たちは真剣に絵本と向き合い絵本を読んで確かめてきました。負荷がかかるようなトレーニング的なことをしていなくても月1回の勉強会でも続けることの力を感じています。そしてそれはそれだけの魅力が絵本にあるからでもあります。いつの間にか40年近くの年月が経っていますが、長きにわたって私たちを楽しませてくれ、これからも楽しませてくれるであろう絵本の魅力を多くの人に知ってもらうことが私たちの役割だと改めて思っています。