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クリスマスシーズンになると

 私たちのおはなしの会ではあまり季節の行事をテーマにした絵本を取り上げません。図書館のおはなしの会は月1回ですし、聞きにきてくれる子どもたちも毎回同じメンバーではありません。聞き手の好みなどを反映することができるような距離感ではなく、物語を物語として渡す私たちのおはなしの会では率先して行事を扱った絵本を入れる必要を感じないからです。

 そんな中で悩ましいのがクリスマスの絵本です。毎年クリスマスシーズンになると新しい絵本がコンスタントに出版され美しい作りが目を惹きます。ただ日本のクリスマスは独特でキリスト生誕と切り離され、どちらかというとサンタクロースがくる日という印象が強い気がします。そしてサンタクロースをどう捉えるかは各家庭によってかなり温度差があります。そのため年齢に関係なくサンタクロースを信じている子とその存在を否定する子がいるのです。おはなしの会で下手に取り上げると自分の考えを否定されたと思う子がでかねません。そこで取り上げるなら内容を慎重に吟味する必要があります。まず物語が物語として成り立っていて綻びがないことが大事だと考えています。聞き手の普段の生活上の価値観を物語の中に持ち込ませずに、物語として楽しませてくれるからです。サンタクロースという心に住むものを主人公にすると、どんなことでもできるという超人的な設定として物語がご都合主義に作られることがあります。けれど人ならざるものだからといってなんでもありでは説得力に欠けます。人ではありませんから人ができないことができるという設定だとしても主人公の思いのままなんでもやりたいように出来てしまうのでは単なる妄想になってしまいます。

 そう言った意味で物語が物語として成り立っているかはサンタクロースの絵本を読むとわかりやすいと思います。そして毎年たくさんのクリスマスの絵本が出版される中、私たちがクリスマスに読んでいる絵本は結局新しいものではなく読み継がれた絵本になっています。完成度の高い物語は古びずに子どもたちにまっすぐ届くことをクリスマスシーズンになると毎年再確認しています。