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ひとりで受け取ること

 おとなはとかく子どもを守り導かなければならないと本能的に思う部分があります。それはひとりでは生きられない形で生まれ落ちる人間だからこそ備わっているのだと思います。けれど守り導こうとすることはいついかなる時も効果を発揮するかというとそうでもないところが難しいのです。親との境目が薄いと思うほど親に助けられ委ねられている時期はずっと続くことではありません。親と子の境目は徐々にはっきりし、おとなの保護や配慮は必要なのに守られている事をあからさまに感じるのを嫌うという難しい時期を過ごしながら子どもはおとなになっていきます。自分がおとなになって見るとおとながどれだけ譲歩し見守ってくれていたのかが見えてきますが、干渉されることを極端に嫌い、おとなのやることなすこと気に入らないという時期はおとなになるために必要な時間なのだと思います。そして自分が自分であることを自覚し自分を作り上げるために干渉されないと思える時間がある事は子どもにとってとても重要だと思います。

 実生活の子どもは当たり前ですが無力な部分が多く、否応なしに保護されるしかないところがあります。そんな中で読書する時間は物語の世界に入ることで自分だけで過ごす事ができます。物語の中にいるときは自分は誰の助けもいらない自分でいられます。ですから自分で読めることは子どもにとってとても重要なことだと考えています。

 そして私たちがしているストーリーテリングや読み聞かせは、その読書への扉を示し扉を開けるお手伝いをすることだと考えています。自分で読むことの前倒しとして子どもがひとりで物語を受け取る体験ができる事を目指して私たちは語ったり読んだりしています。大事なのは読み方ではなく物語であり絵本であるという考え方のベースはそこにあります。読書の楽しみを知っているおとなとして誰にも干渉されずに自分で受け取る楽しさを子どもたちに知って欲しいと考えています。