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何を伝えているのか

 NHKのラジオ番組「ひるのいこい」をご存知でしょうか?お昼12時台に放送されているNHKラジオの長寿番組です。番組冒頭のテーマ曲といいアナウンサーの語り口といい牧歌的な雰囲気はいかにも日本の原風景といった感じで耳にすればご存知の方も多いのではないかと思います。この中でリスナーからの手紙をアナウンサーが読み上げるコーナーがあります。この読み方はとても特徴的です。気持ちを込めて読むということのお手本のような読み方で感動的に読み上げられます。けれどあまりに感情がこもりすぎてエピソードの全体像を掴むのに苦労するので個人的には苦手です。それこそ70年近く続いた番組ですからこの読み方が支持されてきた歴史がありますし、読まれる手紙も情感をこめやすい文章が選ばれていることを考えると、リスナーもこの読み方を前提に文章を書いていらっしゃるのではないかと思います。

 ただこれはおとなの楽しみ方だなあと思います。聞く力が十分備わっていて余力があるからこそ行間とも言える感情を際立たせて読んでも内容が受け取れ、なおかつ感動できるのだと思います。子どもに語っている私たちが誰がどこでどうしたという物事の流れに集中しそこを追うことに徹しているのは、聞いている側が全体像が捉えやすいからだという事が「ひるのいこい」での読み方と比べるとよくわかります。音読は目的によって読み方が大きく変わります。読み方は多種多様でどんな読み方もできるからこそ、自分が何を伝えているのかを意識する事が大事なのだと思います。