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私たちの立ち位置

 年の瀬も押し迫って、じっくり本を読む感じではなくなっています。おとなになってよかったと思うのはやりたいことを自分で決められるので別に読みたかったらやるべきことを後回しにすることも可能ですが、さすがに落ち着いて読む気分にはならない時期です。そこでこんな時は落ち着いたら何を読もうか考えたりしています。どれにしようかと迷うこともおとなの読書の楽しみだと思います。けれどこれはおとなの感覚なのだと思います。たくさん読んできたからこそ生まれる感覚だと思うからです。

 そしてこのおとなならではの読書の楽しみを子どもに当てはめてしまうことがあります。おとなはどれを読もうか迷うほど読む前から自分の好みの本を見分けているので子どもも自分の好みがわかっているような錯覚に陥ってしまいがちなのです。けれど子どもたちはおとなに比べて圧倒的に物語との出会いが少なく自分の好みを自覚するほど物語に親しんでいません。ですから読み聞かせで絵本を選ぶ際に子どもが喜びそうというところに特化していくと物語に親しんで欲しくて読んでいるはずが、知らず知らずに直接的な刺激を与える役になっていってしまうことがあります。子どもに求めるのはおもしろそうだと判断できることではなく、実際聞いてみておもしろかったという体験が重要なのだと思います。この聞いてみておもしろかったという体験の積み重ねが物語に対して自分の好みを自覚していく入り口です。

 おはなしざしきわらしの会がなぜ読み聞かせをしているのか、なぜストーリーテリングをしているのかは、子どもたちに物語を物語として受け取ってもらい、物語の楽しみ方を体験的に知って欲しいと考えているからです。本は実際読んでみないと物語としてどうなのかを判断できないものです。読み聞かせやストーリーテリングをする私たちは読んで確かめたものしか子どもたちに渡していません。ですから子どもたちの顔色を伺うことなく物語として楽しめるものを読んだり、語ったりしていくことが大事だと考えています。私たちは物語の楽しさを知っています。これを活かして絵本を選びストーリーテリングをしていけるといいなあと思っています。